阿蘇カルデラ誕生のストーリー
ユネスコ「世界ジオパーク」
に認定された阿蘇
阿蘇カルデラは、約27万年前から9万年前の間に起きた4回の大規模な噴火によって形成された大自然の奇跡。噴火活動で地下の大量のマグマが地上に放出され、その影響で地下に大きな空間ができ、陥没が起きて、阿蘇地方に大きなカルデラが形成されたと考えられています。繰り返される噴火は地球の鼓動を奏で、世界でも稀な、阿蘇カルデラならではの特異な地形や自然が形成されました。
ジオパークとは「大地の公園」。地球を学び丸ごと楽しめる場所。巨大カルデラに刻まれた噴火の記憶や地球の息吹を感じる中岳火口、活火山とともに人々が自然と共生し、畏敬の念を抱いて育んだ独自の文化を楽しみ、学べます。阿蘇は、2009年10月に日本ジオパークに認定され、2014年9月に世界ジオパークに認定されました。
千年の草原ストーリー
自然と人々の共生がつくった自然
世界農業遺産、
ここにしかない草原文化がある
阿蘇の外輪山を柔らかに覆う草原は、命きらめく草原の王冠のよう。幽玄なカルデラの光景、緑のベルベットに吹きわたる風の音や草の香りは、永らく営まれてきた人々の暮らしを彷彿とさせます。
千年におよぶ古代から人々の手によって維持されてきた阿蘇の草原。昔の人々は稲作に代表される農業を営み、牛や馬の飼育や農業に欠かせない肥料を生産するために草原を活用していました。そして、阿蘇の人々がなりわいとして、放牧、採草、野焼きといった営みを続けることで、今も阿蘇の草原が保たれています。野焼きは、枯れ草を除き、新しい草の成長を助け、美しい草原を作り上げます。燃え上がる炎と黒い大地は阿蘇の春の風物詩となっています。
2013年には、阿蘇のカルデラ周辺に広がる草原の持続的な活用を通した循環型農業により自然環境が保全されてきたことで、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」として世界農業遺産に認定されました。
阿蘇の神々のストーリー
自然への畏敬、太古からの
火山信仰と豊作祈願
古から火の山として崇められてきた阿蘇山。そして、山岳信仰と結びつき、阿蘇山上はかつて「三十七坊五十一庵」が建ち並ぶ壮大な山岳仏教の一大霊場となっていました。古坊中と呼ばれています。古坊中が兵火にさらされ消失した後、加藤清正によって散在していた僧侶たちが呼び集められ、坊舎を再建し、阿蘇山の麓に阿蘇坊中は再興されました。麓坊中と呼ばれています。
そして、古くから農業の神として尊崇されるとともに太古の火山信仰を伝える阿蘇神社は、2,000年以上の歴史があり、全国に約500社ある阿蘇神社の総本社で、「阿蘇12神」が祀られ、境内には社殿や楼門(国指定重要文化財)など壮大な建造物が残されています。
火口の火を崇めてきた阿蘇には、闇の中で幾重にも重なる火の輪が幻想的な阿蘇神社の火振り神事、西巌殿寺の火渡り、霜神社の霜宮火焚き神事といった火にまつわる神事が残っています。また、秋の豊作を祈る年に一度の重要な阿蘇神社の神事「おんだ祭」は、古式ゆかしい絵巻を見るような感動を与えてくれます。
湧き出す水のストーリー
カルデラがもたらす清冽な湧水
阿蘇は「天然のミネラルウォーターの故郷」とも言われ、湧き出る水は素晴らしい水質を誇っています。繰り返された噴火によって、水を通しやすい堆積層が形成され、阿蘇のカルデラに振る雨はこの堆積層の天然のフィルターでろ過され、地下に貯まり、湧き水となり、九州各県の河川に流れ出ています。阿蘇が「九州の水がめ」と言われる由縁です。
阿蘇にはたくさんの水源があり、清らかで美味しい水は、生活用水や農業用水として阿蘇の暮らしを支えています。阿蘇神社門前町商店街の水基めぐりや、巨大な岩の割れ目から絶えずに音を立てて水が湧く「手野の名水」など、水にまつわるスポットも点在しています。
カルデラを彩る
可憐な花
野焼きで再生される
阿蘇の大草原に生き続ける
可憐な花々
5月下旬から6月上旬頃にかけて、阿蘇の山々をピンク色に染めるミヤマキリシマの群落が咲き誇ります。また、紫色の花をつけるヤツシロソウや、燃えるような朱色の花が印象的なツクシマツモトなどの阿蘇にしかない珍しい花々も楽しむことができます。